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Red Orchid
本編 > 第二章 彼たちの心情 >

「あははは、何だろうね、藤平先輩って」

 俺は気まずい空気を払拭したくて、努めて明るい声を上げた。

 そんな俺に、椋介は一つため息をつくと、真剣な表情で、俺に問いかける。

「樹哉、あいつになんかされたか?」

 はい。されました。というか、寧ろ誘いました。

 とは、言えまい。

「えーと、別に……そんな嫌な事はされてない。と思う……」

 煮え切らない答えを言うのが精一杯だ。
 ベルトを解かれて前が全開。そんな場面を見たのだ、何もなかったとは思えないだろう。

「嫌な事はされていない?……お前、もうちょっと、危機感を持った方がいいんじゃないか?どう見ても襲われていたように見えたんだが?」

 不意を突かれて、抱き込まれキスされたのは確かだが、その後は、もう同意で、襲われたとは言わない……

「でも、大丈夫だったし」
「俺が来なかったら、どうなっていたと思う?」

 そのままヌかれてました。ははは……。
 いや、俺、それでもいいんだけど。とも言えない。

「そう、だね。危機感を持つようにするよ」
「そうしてくれ。じゃないと、心配で、しょうがない」

 そう言って、ため息をつく椋介に、違和感を感じる。
 友達ってだけで、そこまで心配するものだろうか?

 例えば、智章。
 智章が今日の俺の立場で、俺がそれを目撃したら……

 ああ、やっぱり、怒るな。そんで、心配する。

 でも、なぁ〜、俺は、智章が好きだ。それは、Loveではないけれど、限りなくそれに近い。

 と、いう事は、椋介、俺の事、ちょっと好き?だったりして。
 ははは、まさかな。

 椋介は見るからに、ゲイでもバイでもないだろう。
 聞いてはいないけど、そんな感じの事を言っていたような気がする。

 そう思いながら、椋介を見ると、椋介の手が俺に伸びてきた所だった。

「何でお前にだけ、こんな気持ちになるんだろうな」

 すっと、俺の頬を撫でながら、優しげに呟いた。

 はい?
 マジですか?

「り、椋介っ」

 俺が名前を呼ぶと、途端に真っ赤な顔をさせ、手を引っ込める椋介に、俺は気付いてしまった。
 椋介の気持ちに。

 そして、椋介に引き摺られるように、赤くなる自分の顔。

 ……やばくないか?


 椋介のように純粋に向けられる好意に俺は弱い。
 惚れっぽいというのか、流されやすいというのか……

 つい、その好意を受け入れたくなる。

 ま、当然、好みもあるわけなんだが、椋介なんかはぴったりと範疇内なわけだ。

「椋介、あの……」

 赤くなった顔をそれ以上さらして置けなくて、椋介からの視線から避けるように、俯く。

 いや、だから、椋介みたいな純粋な好意に弱いんだって。俺。

 やばいな……やばいよ。
 その思いに応えたくなるじゃないか……

 いや、いや、駄目だろう。

 何度もそれによって苦汁を舐めてきた事を忘れてはいけない。

 今度こそは、と思いつつ恋につっぱしると、必ず背にある、消せない過去が付き纏う。
 それを知った後の顛末は、哀しい結末を何時も告げてきた。

 知り得た事実に、驚き、憐れみ、そして、なぜか最後は蔑みに変わって終了していった過去の恋人達。

 俺の過去がなんだと言うんだ。
 自分で選んだ訳でもないのに、この仕打ち。酷すぎる。

 だから、椋介の好意を今は受ける訳にはいかない。
 せめてもう少し、俺を知ってもらっていたなら、また違うのかもしれないが、知らそうにも、俺は今偽りを演じている訳で……

 ああ、もどかしい。
 本当は、椋介、好みなんだけど……

 とか、考えていると、渡り廊下に敷き詰めてある板をガタンガタンと鳴らし、誰かが走ってくる音がする。

「わーー、ごめん。遅くなっちゃった」

 そんな湯でタコ状態の俺達二人のいる場所に、そんな緊張感のない声が響き、智章が顔を出した。

「図書室で嫌な奴に会って、嫌味言われて……あれ?椋介!なんで出てきてるの?」

 椋介を見止めると、智章は驚いて立ちすくんだ。
 きっと、黙って二人で武道館へ入って、椋介が驚くのを楽しみにしていたからだろう。

 そんな智章に視線を送り、俺と椋介は同時にため息をついた。

「俺がいちゃ悪いのか?」

 赤かった顔が智章の出現で、元に戻った椋介は、智章に向き直ると不機嫌な声色を出す。

「え?別に、悪くないけど……椋介どうしたの?なんでそんなに機嫌悪いの?」
「別に、機嫌など悪くない」

 そう切り捨てる椋介に、俺は微笑を漏らす。
 二人のやり取りもいつもの調子で、「機嫌わるいでしょ」「悪くないって言ってるだろう」などと言い争いを始め、俺はそんな二人を微笑ましく思った。

 当然、俺の顔も平素のそれに戻っているし、智章が居る事で、椋介との話しは一端終了した事に安堵したのは秘密だ。

 だって、今の俺には椋介の思いに、応える事なんて出来ない。
 告白されても困るだけだ。

 椋介があのまま告白してきたかどうかはいたって不明だが……。

「まあ、まあ、せっかくだし、俺たち、椋介の練習見てっていい?」

 ともかく、二人を諫め、本来の目的でもある、その事を俺が口に出すと、椋介はぎょっとして俺を見た。

「なに、練習を見ていくのか?」
「うん。だって、俺部活何するか考える為に色々見にいくから、ついでに、ね、智章」

 俺にそう振られて、智章はいたずらっ子の顔をして俺の言葉を固定する。

「そうだよ〜。いいでしょ?それとも見られるの嫌?」

 そう言って首を傾げる智章。

 ああ、子悪魔だよ。智章が。
 可愛くて、何でも言う事聞いちゃいそうになるよ。俺は。
 
 でも椋介にそんな顔は効かず、不機嫌マックス。的な顔で、

「……別に嫌じゃない。勝手に見ていけばいいだろう」

 と智章に吐き捨てた。

 そして、俺の方を向くと、不機嫌さの多少残った顔をしながら、そっと呟く。

「樹哉、自分でもどうしたいかなんてわからん。だから、そんなに深く考え込まないでくれ」

 ま、まだ続いていたんですか!!その話題っ。

 思わず、驚きの表情を作ってしまったが、直ぐに、冷静さを引き寄せて、ふんわり笑ってやった。

「わかった。椋介との関係は今までと変わらず友達。それでいいんだよね?」

 俺がそう言うと、ふんっ。と笑って「今はな」と言って智章の方へ向かっっていった。

 【今は】ってっ!!
 やっぱり、未来は違うっての?椋介さんっ。

 俺は、先に歩いていく二人の背中を見ながら、これから、やっかいになって行くだろう俺の恋愛事情に不安を感じていた。

 だって、そうだろう。

 俺のお気に入りは、智章で。
 俺を気に入っているのは藤平先輩で、純粋な好意を椋介は向けてきて……

 ややこしい。
 しかも皆男って……どうよ。俺。
 バイじゃなくて、ゲイ?


第二章・完



益々、王道からはなれてきてますけど・・・(;^_^A アセアセ・・・。

しかし!次回からは、学園の内情王道展開「ランキング」がからんできます。その上、樹哉の背中の秘密が明らかに!!

徐々に確信へと迫ります。

ご意見・ご感想などいただけると、泣きます(笑
その上更新頻度があがります…たぶn\(`o'") こら-っ
ただ、批判に少々気弱になりますので、その際には、オブラートにお包み下さい(^-^;
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