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Red Orchid
本編 > 第三章 日常の秘密 >

「俺、そんな目立ちます?」
「目立つよ?その美貌で、目立たなかったら皆の目が悪いでしょ?」
「はぁ、そうですか」

 今更ながら、変装でもしてここに入ればよかったと後悔した。
 目立ちたくないと願っているのになぁ……

「目立ちたくないの?」
「ええ、出来たら平穏な毎日を送りたいです」
「平穏ねぇ。う〜ん、それは無理じゃないかなぁ〜、きっと君ランキング上位に入るから」

 真剣な声で発した雪村の単語に、敏感に反応する俺。

「ランキング?」
「そう、ランキング。この学園の娯楽なんだ『人気ランキング』。よく大学とかでミスコンあるでしょ?あれと似たような感じ。違うのは男が男を選ぶって所かなぁ?」

 男同士でミスコン?
 ありえない。

 男子校ってどこでもこうなのか?

 その上位に俺が入るというのか。
 そうなったら、きっと、今よりも回りは騒がしくなるんだろう。

 俺はこれからの事を考え、盛大にため息を吐いた。

「……面倒くさいなぁ」

 不機嫌な調子で、思わず漏らした俺の本音。

 …………!

 あああ、やってしまった。

 雪村は今どんな表情をしている?
 今のは、『俺なんかがそんなの無理ですよ』とかって謙遜しておくべき所じゃないか?

 これじゃ、俺、自意識過剰な嫌なやつだよ。

 後ろにいる雪村がどう思っているか気になって、振向きたい衝動にかられるが、あいにく、村上がこちらを、ちらちらと見るので実行に移す事が出来ない。

 あっちむけよ。傲慢教師がっ。

 心で暴言を吐きながら、村上を睨みつける自分に気付くき、ハッとする。
 俺は、慌てて表情を戻した。

 なんか、雪村の前だと、素に近くなる。嫌だなぁ。

 そんな風に思って苦笑している俺に投げつけられた、雪村の言葉は意外なものだった。

「そうだね。でも、君、相沢くん。なんだか見た目と違ってずいぶん男らしいんだね」

 男らしい?
 そうなんだろうか。

「すみません、意味が分かりませんが」
「うーん、別にいいよ。俺の主観だし。ともかく、ランキング上位に入るだろうって下馬評が高いから、君、気を付けた方がいいよ」

 雪村から、【下馬評】なんて下品な言葉が出るというのが似合わない。そう感じ、俺は、眉を潜める。

 けど、……【下馬評】って、何?賭け事でもあるのか?
 しかも、気をつけるとは、何に?

 雪村と話していると、頭の中に疑問が溜まっていく一方だ。
 転入して二週間がたとうとしているのに、まだまだこの学園は謎だらけで、俺の頭はついていけない。
 そう思った。

「なにから、聞いていいのか……」
「混乱してる?誰も教えてくれなかったの?」
「ええ、ランキングとかの話はまったく」

 そうだよ。
 なんで教えてくれなかったんだ。

 と、この学園で出来た友達、椋介と樹哉に心の中で悪態をつく。

「そうなの。じゃ、俺が教えてあげようか?色々と」
「え?」

 そう言った雪村の声に、色を感じて、驚きのあまり、振り返えってしまった。

 雪村王子はロイヤルスマイルに、艶やかな色気を発しながら、こちらを見つめていた。

 え、エロい……そう思うのは、俺の気の所為ですか?
 清楚なロイヤルスマイルにそれは反則です。

 それに、色々って、学園の事だけじゃないような気がする。
 いや、きっと違う。と思う……

「け、結構です」

 確かに雪村に興味はあるが、そんな誘いに乗るわけにも行かず、即座に断った。

「遠慮しなくても……」
「遠慮じゃないです」
「ふふ。俺に用事があったら、いつでも言いに来てね、クラスは3A。放課後は大体図書室にいるから」

 そう雪村が言ったと同時に授業の終わりを告げる村上の声が聞こえる。
 その声に、俺がそちらに視線を流すと、椋介と智章が俺の方へ歩いてくるのが見えた。

「じゃ、またね」

 と言う言葉と同時に雪村の気配が遠ざかっていく。

「なんだ?あの人。結局授業さぼってただけ?……」

 雪村の消えた後を見つめ、俺は小さくため息をついた。

 この学園の美形は皆男好きなのか!智章意外は。
 いや、この調子だと、智章もわからないな……

 というか、今まで俺に接触してきたのは、不細工でも美形でも男をそういう対象に出来る者たちばかりだった。

 ますます、恨むよ。豪望さん。
 こういう事は最初に言ってくれよ。

 もう一度盛大にため息をついて、自分がこの学校で平穏に過ごせるようにと心で祈った。

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