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三輪×片山シリーズ
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青の贈り物


「はぁ……なんだよ……くそ、三輪のアホ」

 部屋の隅に放り出した鞄の中から少しだけ飛び出した、綺麗にラッピングされたそれを忌々しげに見つめながら、俺は盛大にため息をついた。

 今日は24日。

 高校最後のクリスマスイブ。

 普通、イブってのは、恋人と過ごすだろ?
 世間ではそーだろ!

 俺の場合だったら、イブを一緒に過ごすのは、……ほら、なぁ、あれだよ。
 自己中、横暴男、で、エロ魔神。──三輪。

 の筈だ。
 なのに、今、俺がいるのは、誰も居ない、冷え切った自分の部屋。

 何が悲しくて、高校生にもなった俺が、家族とクリスマスパーティなんぞしなきゃいけねぇーんだよ。

 それもこれも、今日から遡る事3日前。
 
 例によって、放課後の校内で盛った三輪に俺がキレて、売り言葉に買い言葉で、怒鳴った俺に、珍しく三輪が食って掛かり、喧嘩をした。

 その日一日怒っていた俺だったけど、その日の夜にはいつものごとく三輪からの謝り……というか、ご機嫌伺いの電話が掛かってくると思いこんでいた。

 でも、その予想は外れ、しかも、運悪く、喧嘩をしたのが二学期最後の日で学校で偶然を装い会う事も叶わなかった。
 次の日にはかかってくると確信していた電話すらなく、いじっぱりな俺がこっちからかけるなんて出来ずにもんもんと土曜日、日曜日が過ぎ去り、あっという間にクリスマスイブ当日を迎えていた。

 当初のイブの予定は、三輪と二人で買い物行って、その後三輪の手料理で過ごす筈だった。

 だから、いくらなんでも、今日には連絡が来るだろうと、俺は一日中携帯を手放さずに居た。

 なのに、その携帯は役立たずで、いらない電話とかメールとかは受信しても、肝心の三輪の文字が点灯せずに、今日の役目を終えようとしている。

 なんだよ、なんで、そんな怒ってんだよ。くそっ。
 
 三輪の馬鹿たれっ。

 …………
 
「どーすんだよ、これ」

 見つめる先は、ラッピングされた四角い箱。
 中身は、意外に読書家でもある三輪の為に、青い皮のブックカバー。イニシャル入りだぜ?
 他の誰が使えるつーんだよ。
 
「馬鹿……三輪…」

 電話かけてこい。

 と、鳴らない携帯を睨み付け思念を送っても、相も変わらずウンともスンとも言わないそれ──。

「くそっ」

 大体、そんなに怒る言葉があったか?

 俺が言ったのは、

 学校で盛るな。
 自分勝手過ぎ。
 三輪のバーカ。

 俺の事なんて何も考えてないだろ。

 ……。
 これか?

 これが悪かったのか、やっぱり。

 でも、何時誰が来るかもしれない空き教室で、そんな事をされたら誰でも怒るよな?
 自分の事考えてくれてないって思わね?

 いや、三輪が俺の事どんだけ想ってくれてるかってのは解ってっけど、もう少し周りを気にして欲しいっていうか……。

 …………。

 ……でも、どこでも盛る三輪に、実は内心すこーし嬉しいから、きっぱりと断れない俺も悪い。
 かもしれない。

 だったら、俺も言いすぎたかも……な。

 うーん……。

「はぁ……」

 俺はため息を一つついて、携帯から三輪の番号を出してボタンを押した。

 別に、今日どうしても会いたいとか、三輪の声が聞きたいとか、そんな事はなくて、ただ、行き先の決まっているこの箱を捨てるのが嫌なだけだから。

 ただ、それだけだからっ。
 ……今回だけだからな、三輪。

 盛大に誰にしてるんだか解らない言い訳を心に秘めて、コール音を数えた。

1回…2回…3回…

 ガチャと機械音がして、相手に繋がる。

「あーー、み……」
『留守番センターに接続します。…こちらは、080……』

 ブツッと通話を切り、手にしていた携帯をベッドへと放り投げる。
 そして、鞄から青いリボンの掛かった箱をゴミ箱に突っ込んだ。

「……もう、知らねっ」

 服のままベッドに潜り込んで、頭まですっぽりと布団を被った。

 ……なんで、電話通じねーの?な、三輪。俺だけか?今日を楽しみにしてたのは……。


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