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三輪×片山シリーズ
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 春な日


美大受験の為に俺はこの数ヶ月時間を費やしてきた。
だから、合格を確かめて、かなり、うれしい筈だ。

いや、うれしいのはうれしいんだけど、それ以外のなんか、、、なんつーかこう。
熱くなるっていうのか……

あぁ、もう。

そんなもんもんとした状態を収める事が出来ずに、俺は家に帰ってきてしまった。

…理由は分かってる。

俺の秘密な恋の相手、三輪の所為だ。





それは、数時間前。
自分の番号を確認した俺は、その場で三輪に短い文章をメールした。

友ダチにも、研究所の松永さんにも、家すら後回しで、真っ先にだ。

合否の連絡をしてるんだろう、周りは、そんな連中でごった返していて少しうるさい。
だから、俺は少し離れようと歩き出した。手にはしっかり電話を握り締めて。

そうして駅への道を歩きながら、掛かってくるだろう電話を待つ。
数分後三輪からの着信。
待ってたって事が分からないように、心で5つ数えてから出る。

『片山さん?おめでとうございます!』

「今大丈夫か?期末だろ?」

『大丈夫です。今休憩に入ったとこなんです。そんな事より、よかったですね』

「あ、うん。ありがとう」

『片山さん頑張りましたもんね……俺ほっといて』

「ほっといては余計だつーのっ」

『はは、でもほんと良かったですね』

「あぁ」

『それじゃ明日一杯お祝いしましょうね』

「え?」

俺はびっくりして、その場に立ち止まる。

一次に合格してからはひたすら二次の為に、研究所に通った。
三輪と会うのを我慢して…。

そう、確かに我慢したんだ。俺も。
だから特別三輪と約束をしたわけじゃないけど、今日この後、三輪と会う事になるだろうと思ってた。

なのに…今日じゃなく明日?

『え?って片山さん、俺も一応期末中ですよ。明日で試験は終わりだからその後で、ね』

電話の向こうの三輪の声からはなんの感情も分からない。

「あ…そうだよな、うん、明日な」

なんだよ。
会いたかったのは俺だけかよ。

…いや、別にいいんだけど。
そりゃ、そうだよな。一応試験中だし、な。

気が抜けた。

「あ、じゃ、もう電車に乗るから切るな」

気が抜けすぎて、今日はもう誰かとどっかに行って、はしゃいでしまおう。
あ、そういえば橘からメールきてたな。さっき。あいつ誘って、カラオケでも行こうかな〜

とか思っていたら、三輪は見越していたのか、釘をさしてくる。

『片山さん、今日はすみません、けど、おとなしく家にいてくださいよ』

「は?なんで?お前は勉強だろーけど、俺はもう羽のばしてもいいんだし、いーだろーがっ」

『そんな事言って、橘さんとでもどっか行くつもりですか?』

「え?………なんで、分かった?」

『やっぱり、…片山さんの事なら何でもわかりますよ。でもダメですからね』

「なんで、お前に指図されなきゃいけないんだよ」

『いえ、指図じゃありませんよ、片山さんの為に、言ってるんですけど』

今までと明らかに違う三輪の声。

その口調はかすかな怒気を含んでいて、三輪との最初がトラウマのようになっている俺は条件反射のように身体を強張らせてしまう。

「…なんで?」

『今日橘さんと出かけたら、明日ひどいですよ?』

情けない話し。こんな時の三輪はどうしようもなく、怖いのだ。俺は。
何をされるか分からない恐怖。

しかも、そんな恐怖の後にくる快楽ってやつを身体は覚えてて、ぞわっと何かが動き俺は身体を震わせる。
そんな自分が正直嫌だ。

「…」

『あ、ひどいって、片山さんにとってはひどくないのかな〜』

「……わかったから、三輪、今日はおとなしく家にいる」

『俺だって我慢してるんですからね』

「わかったって言ってるだろーがっ」

しつこい三輪にあきれてそう言った時、三輪の声質がまた変化する。
今度はなんだ?

『今すぐにでもやりたいでんすよ?』

普段の三輪の声じゃない、熱っぽいその声。

俺にしか解からないだろう、秘め事の時のようなその声になんだか、嫌な予感がする。

「…」

『俺すぐに思い出せますよ?』

「三輪?」

『乳首を弄った時、びくっって震える身体とか』

「!」

どこで、なにを言い出すんだ。こいつは。
俺は、羞恥で顔が熱くなるのを感じた。

同じ電車で帰るんだろう人が数人俺を追い越していく。
そいつらに声が聞こえる筈もないが、俺はあせって、一本路地に入った。

『舐めて欲しいのに素直に、言えない時の顔とか』

「三輪!」

『俺を迎え入れて気持ち良さそうによがってる声とか』

「やめろ、三輪!このエロ大魔王がっ!!!」

俺はそれ以上言うのを防ごうと電話の向こうの三輪に向かって怒鳴る。
が、効果はないようで、止める気配がない。

電話を切ってしまえば良いのだろうが、なぜか、それも出来ない。
三輪が怖いからって訳じゃない。

『ふふ、、教えてあげましょうか?片山さんの中に指とか入れるようとするとね、あそこ、ヒクヒク動いて俺を欲しがるんですよね』

「…っ、ばっか!!」

『それでするっと入っちゃうんですよ、で、片山さんのいい所をくりくりっと擦ってあげると、いい声を上げて俺を煽るんですよ』

「三輪…もうやめろって…」

俺は、三輪の声が耳から脳に響き、その時の自分を思い出し、身体が熱くなってしまっていた。

なにもされてない。三輪の声を聞いてるだけなのに・・。
なんだよ、俺の身体。

『あ、すみません、休憩終わりそう、じゃ、明日』

「ちょ、三輪!」

自分勝手に会話をして、エロ大魔王からの電話は突如切れた。

がーーーっ!!!なんて身勝手な奴。

まだよく知らない街の路地で一人身体を熱くしてしまった俺。
情けなさで、涙がでるわっ。くそーー。覚えてろ三輪!!

暖房がガンガンにきいてる帰りの電車で、何度数式を思い出してみても、消えないエロボイスの所為で、コートを脱げず、俺は冬なのに汗をたらしながら帰路についた。

な、情けなっ。


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