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三輪×片山シリーズ
STORY > 春な日 >

そして、結局身体の熱は保ったまま、俺は家に付いてしまい、こんな状態にした、三輪を恨む。
ともかく、家に入ろうと、玄関を開けた。

「は〜る〜き!!」

そのドアを開けると鬼が居た。

いや、間違った。
母が鬼の形相で立っていた。

「あ、ただいま」

「あ、ただいま。じゃないっ!!お前はあれか!わざわざ今日仕事を休んだ、母の心配がわかってないのかっ!!」

「え?あっ!!ご、ごめん」

エロ大魔王のおかげで、合否連絡を家にするのを忘れていた。って事に気がついて、急いで謝る。

「そんでどうだったの?」

「あ、うん、合格した」

「ご、合格!!!合格ぅぅ!!」

母が廊下の向こうのリビングに向けて大声で叫ぶと、そのドアが開きなみだ目の父が飛び出してきた。
きっと、ドアごしにハラハラしながら、様子を伺っていたに違いない。

へたれな父は、そのまま、母と抱き合う。

「おとーさんっ。合格だって!合格」

「うん、よかったな!理子さん。晴貴もおめでとう!」

「ありがとう」

こんな年の抱き合ってる両親を見るのは、あまりいい気がしない。
でも、こうなったらきっとしばらくこのままだろうな。

おかげで、身体の熱も冷めた。その辺はありがたいかもな。

いつもの光景を繰り広げる両親をそのままにして、ため息をつきながら、リビングへと向かう。

リビングでは、姉の茉子が三人掛けのソファーにあぐらをかいて座り新聞を読んでいた。
長い黒髪を後ろで無造作に結わえ、何日着てるのか分からないスエットの上下にくわえタバコをくゆらせている。
こっちはあくまで日常。

極端。うちの家族。

「おぉ、おかえり〜未来のデザイナーよっ」

「ただいま」

新聞を折りたたみながら、俺に向かって茉子がにっこりと微笑む。

こいつ、ほんと、微笑むとかわいいかも。
身内ながら、そう思う。

俺より10も上だけど…
出戻りだけど…
性格おっさんだけど…

「よかったじゃん、晴貴!合格だって?これで憧れの君にも会える!」

は?
憧れの君?

俺はコートを脱いで、茉子とは反対のソファーに座る。

「あぁ、ありがとう。っていうか、憧れの君てのは何だ?」

「あーーなんだっけ?有田?美濃?瀬戸?う〜〜ん」

「…益子…ってか、焼き物かっ!焼き物繋がりで覚えてんのかっ、お前は」

「え、だって、そうじゃん、それに、前はうるさいほど、『益子先輩が〜〜』『益子先輩とぉ〜〜』とか言ってたのに、最近全然言わないから忘れちゃったんだよ、私は」

そう言えば、先輩の事を思い出すなんて、最近なかったな。

三輪の所為だな。三輪がいろんな事するから、毎日が精一杯で。

…いろんな事…………

う、やばい、また思い出してしまった。三輪のエロボイス。

せっかく、この家の雰囲気で、忘れてたのに。

…収まれ!自分。コートはもうない。

でも次の茉子の言葉で、現実に戻り、収まる俺。
茉子すげぇ、三輪に勝つなんてすげぇ。やっぱり、この家の奴すげぇ。

……………あたりまえだ。俺。
収まらなかったら、俺がおかしいんだ。普通。

「でもほんとよかったよ、晴貴が受かって」

「え?そんなに心配してくれてたのか?」

「心配だよ!」

日ごろの茉子からは絶対に考えられないけど、そんなに思ってくれてたなんて感無量だ。

「ありがとう!茉子。意外だったけど、うれしいよ」

「そう?だって、皓貴と賭けてたもん、しかも10万だよ!そりゃ心配するでしょ」

やはり茉子だった。
俺は茉子に抱きつこうと浮かした腰をまたソファーに鎮める。

そうだろーよっ。あんたは、お金と仕事だけでしょうよ。興味あるのは。

「俺がバカだった」

「あんたが受かる方に賭けたんだから、感謝しなさいよ〜〜」

「なんでだっ、…で、皓貴は」

「こんな時間起きてるわけないっしょ?」

「弟の合否より睡眠かよっ」

「しょうがないじゃん、皓貴は夜の仕事だもん、ま、私も似たようなもんだけどね」

「もういいデス。期待した俺がバカだった」

「そーデス」

「部屋行くわ、んで、少し寝る、疲れた。なんか。起きたら昼飯食うから、俺の分とっとけよ?」

「あ〜はいはい。結局、あんたも睡眠じゃん」

「ほっとけ、俺は受験の心労で、この所、寝れてないのっ」

そう言って、俺が立ち上がろうとした時に茉子が思い出したように言った。

「あ、忘れてた、皓貴からのメッセージ」

「何?」

「合格おめでとう。お前の所為で大損だ。その分俺の店でバイトしろ」

「絶対、嫌です!と言っておけ」

「わたしはメッセンジャーじゃないつーの、ちなみに、不合格の場合も聞く?」

「言ってみろ」

「残念だったな。これも人生経験だ。ついでに、俺の店で人生経験をしろ」

「…あいつ、俺をどうしても働かせたいのか?」

「そうじゃない?あんた、顔だけはいいもん」

「お前に言われたかねーよ」

「どういう意味よ、私は顔も性格もばっちりよ。ついでに金持ってるし」

「ないのは男運だけ、ってか?」

「は〜る〜き〜ぃぃ〜〜〜」

俺はすばやくコートを掴むと立ち上がり、茉子の鉄拳が飛んでくる前に、リビングを後にした。
怖ぇ〜よ。茉子。

そして、廊下に出たとたん目につく両親。

「理子さん、あんな小さかった晴貴が、春からは大学生だよ……う…………うぅ」

「そーだね、おとうさん、…とりあえず、リビング行こう、ね、」

「う、…しかも無事合格って………ぅぅう」

あ、まだやってた。

母に抱きかかえられて泣く父。少し困り顔ながら、なだめる母。
そんなオーバーな。
しかも、男女逆でだろ。といつも思う。俺。

そんな二人に「ちょっと寝るから」と一声掛けて、俺は二階の自分の部屋に向かった。


…かなり奇妙な家庭だよな……うちって。

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