<< BACK
三輪×片山シリーズ
STORY > 嵐 >


 



 俺の、大事な大事な、年上の恋人。片山さん。
 もちろん、俺は、片山さんの恋人だから、あの人が何を思って、何をしているか、把握している。

 今頃は、この4月入った大学で、好きな教授の講義を受けている頃。

 その場に一緒に居れないないのは、辛いけど、どうがんばっても、俺が大学へ通えるのは、来年だ。
 それまでは、学校が終わってからと、週末。それで、我慢するしかない。

 そう、我慢しているのだ。俺は。
 高校時代は、毎日学校で会えて、さらに、夜会っていた。
 もう、ほぼいつも一緒みたいな状況に慣れていた俺は、昼間、あの人の居ない学内が辛くてしょうがない。

 なのに、最近の片山さんは、キャンパスライフとかを満喫しているらしく、数少ない(毎日会ってはいるが)夜のデートでも、楽しそうに、大学の話をする。
 まるで、俺が居なくても平気なその様子に、俺はいつも苛ついてしまう。
 ま、それを表面に出す事はないが……。
 
 そして、俺は穏やかさを装いながら、出てくる名前をチェックし、醜い嫉妬心を増幅させる。
 少しでも不穏な出来事がその可愛らしい口から出ようモノなら、俺は間違いなく大学に乱入するだろう。
 不穏分子を排除する為に、そして、大学内に片山さんが、誰のモノなのかを知らしめる為に──。
 
 だから、ね。片山さん、俺を不安にさせないで。

「おーい、三輪。もうそろそろ、新歓始まるから。早く来いよ!」

 不穏な事を考え、ぼーと、生徒会室から、外を眺めていた俺に、悪友とも言うべき男、瀬田正樹に呼ばれた。
 「ああ」と気のない返事を出せば、

「なんつー覇気のない。会長がそんなんじゃ、今年の新歓成功しないんじゃね?」

 と、呆れた顔で、呟いた。
 俺は苦笑しながら、席を立ち、瀬田の方へと向かう。

「腑抜けてんじゃねーよ、会長様?片山さんが見たら、どう思うかね?」
「こんな腑抜けでも、片山さんは、好きだと言ってくれるさ。お前らとは違う」
「うっせー、中山は、俺に惚れてんだ」

 短い真っ黒な髪をツンツンつったてて、それをフルフル揺らして怒る瀬田の様は、ヤマアラシのようで、そのトゲに刺されているであろう恋人を哀れむ。

 瀬田の恋人の中山静は、美術部で同じになって以来なにかと俺の悩みを聞いてくれる、いわば、よき相談相手だ。
 そんな中山に、瀬田は少々もったいないと思うのは、余計なお世話だろうか?

 瀬田ももう少し、中山に優しくしてやったらいいのに、俺のように。

「瀬田、中山はどうした?」
「あ?んなもん、とっくに、講堂だろう。俺は暢気な会長様を呼びにきただけだつーの」
「そうか、悪いな、じゃ、行くとするか…」
「んとに、なんで、お前なんだろーな、生徒会長」
「それは、橘にでも聞いてくれ」
「前任指名か……、拒否権なしってのがやっかいだったな」

 俺が片山さんの面影残る美術部を辞めざるを得なかったのも、生徒会長などというやっかいな仕事をさせられているのもすべて、片山さんの親友の位置にいる、気にくわない男の所為だった。

 ま、片山さんのいない、美術部にはあの人の面影を見る以外に用はないのだから、そろそろ、潮時か。と思っていたのも事実。
だけど、美術部以上に帰りが遅くなる生徒会などと、ほんと、余計な事をしてくれるものだ。橘は。
 おかげで、片山さんと会える時間が短くなっている。というのに。

 そんな男は、現在、某有名大学で経営学を学んでいるとか。しかも、金銭的支援を俺の親父がやっている。というのは、最近発覚した事実で、片山さん共々驚いた。
 父と橘の関係など、どうでもいいが、これから、一生あの男と顔をつきあわさなくてはいけないかと思うと憂鬱になる。

 軽くため息をついた俺に、「早く」と瀬田が急かす。
 俺は、ゆっくりと足を進めながら、今日の夜会えるであろう、あの可愛らしい人を思い浮かべ、気分を変えて、新歓の挨拶へと向かった。

niconico.php
ADMIN