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三輪×片山シリーズ
STORY > 嵐 >

「お前がそんな風じゃ、俺にも入り込む隙がありそうだ。そう思うのも道理じゃないか?」
「……たとえ、貴方が言っていたように片山さんが感じていたとしても、それは二人で解決する。貴方は片山さんの隣になど立てない。立たせない」
「それは、三輪が決める事じゃないだろう。晴貴が決める事だ」
「……」

 益子の言葉は理解出来る。
 だが、納得出来る物ではない。

 俺は自分を落ち着かせようと、冷めた紅茶を口にした。

「三輪、一つ掛けをしないか?」

 と、突然益子がそんな事を言い出した。

「……なんですか?」
「三輪は晴貴が私に落ちる事はないと思っているのだろう?」
「当たり前です。貴方だけじゃない、片山さんは誰にも靡きませんよ」
「けど、私が晴貴にちょっかいを掛けるのは許せない」
「もちろんです」
「そこで、だ。今日から1ヶ月私は晴貴を本気で口説いていく。お前は私と晴貴が二人きりで会う事を黙認し、邪魔をするな」
「は?」
「そのかわり、その一ヶ月で晴貴が落ちなければ、私はきっぱり、晴貴の事を諦めよう。お前が望むなら晴貴の前にもう二度と姿を現さない。……どうかな?」
「何を馬鹿な事を……」

 こんな馬鹿げた提案など、乗るつもりはなかった。

 けれど……。

「晴貴を止めておく自信がない、か?三輪。私はこんな掛けをしなくても、晴貴を口説くつもりだ。ま、多少お前の横やりで長期戦になるかもしれないが、私は必ず晴貴を落とす。このまま縛り続けられた晴貴はきっと私に絆されるよ」
「……貴方こそ、すごい自信ですね。ありえませんけど」

 憎まれ口を叩くものの、俺の心は不安に支配されつつあった。

 益子の言うように、片山さんを俺の不安で縛っていいものじゃない事はわかっている。

 ……そうだ。判っていた。
 俺はずっと、不安だった。
 
 ただの嫉妬だけじゃない、誰かに片山さんが取られる恐怖に戦き、片山さんの周りを牽制し、排除して来た。

 だからこそ、俺は変わろうとしていた。

 けど、それが間に合わなかったら?
 気付いてくれなかったら?

 そして、強姦した恐怖に誰かがつけ込んだら?
 
 それが益子。と言う事も十分考えられる。 

「どうする?三輪。1ヶ月だけ我慢して、晴貴との情を確かめるか、このまま縛り続けて、晴貴を苦しめ続けるのか」

 片山さんを晴貴と呼び、片山さんから尊敬されている、『愛される』に近い男──益子。
 そして、恋人となって尚、名前で呼んで貰えていない、俺。

 ……。

 この時の俺は頭がどうかしていた。
 大学と高校という生活圏が離れた事で、不意に湧いた不安に動揺していた俺は、まんまと益子の言葉に深みに嵌って冷静に判断できなかったのだろう。

 そんな俺の口は、言ってはいけない結論を出していた。

「その掛けに乗ります」

 その言葉を耳にした益子の満面の笑顔みて、俺は奴の策略に引っかかった事を理解し、後悔した。
 だが、出した言葉を引けるほど、俺のプライドは低くなく、奴の言葉に馬鹿正直に従ってしまった。

 口説くと言っても、益子が無茶をする事はない。
 鈍感な片山さんだから、1ヶ月気付かずにやり過ごすだろう。
 そして、こっそり、様子を窺えばいい。

 それに、こうする事で、束縛しない大人になった俺。を感じ、俺との関係が良くなるかもしれない。
 そう軽く考えていた。

 当然、俺と片山さんの会う時間は減った。
 それでも尚、余裕の様子を装い、片山さんが益子と会うのを快諾した。

 約束の1ヶ月、残り一週間を切った頃、俺に許可を得ずとも益子と会うようになった片山さんを、通りのカフェで見つけ、その楽しそうな様子に、いたたまれない気持ちに苛まれつつ、その時間が早く過ぎ去るのを祈った。

 自分の愚かさと共に──。


 そして、俺は判断を誤った。
 俺のちゃちなプライドがそうさせた。

 俺がもっと早く益子の思惑に気付いていれば、片山さんをあんな目に遭わせる事はなかったのに。






 後悔の嵐は、俺の中で未だ渦まいている。

 



Fin




三輪、片山受難編前編です。
今回は三輪視点、後半は片山視点でお送りします。いやーー、初シリアス?(笑
いつもとは違った書き方でお送りしております(^-^;

ご意見・ご感想などいただけると、泣きます(笑
その上更新頻度があがります…たぶn\(`o'") こら-っ
ただ、批判に少々気弱になりますので、その際には、オブラートにお包み下さい(^-^;
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