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三輪×片山シリーズ
STORY > 凪 >

「……なら、三輪の気持ちはどうだろうな?晴貴が言っていただろ?三輪が最近変わったと。もう晴貴に飽きたんじゃないか?他に良い奴でも作って……」
「それでも!……それでも俺は、三輪以外にいない。三輪を求めるしか、出来ねぇ」


 思えば最初はただの恋だった。しかしそれは俺には無くてはならない思いに、いつしか変わっていた。
 換えの効かない思いだからこそ、失うのが怖くて確かめる事も出来なくなったんだ。

 そうでなければとっくに聞いている。

 そんな強い思いを胸に益子さんを見上げると、その冷たい双眸は俺を見下し呆れていた。

「どれほど強い呪縛なんだ……間違っているのは晴貴、お前だ。その間違いを私が正してやろう」

 そう吐き捨て、再び益子さんが迫ってきた。

「やめろっ!」

 自分より倍も大きな男に上に乗られては身体を捩ろうとビクともしない。
 そんな事は解りきっていたけど試さずにはいられなかった。

 身体を捻ったり、跳ねさせたりして抵抗するも、乗られた身体も益子さんの大きな手に頭上に縫いつけられている手も解放される事はなく、それどころかよりいっそ束縛の力は強まっていた。

 片手で易々と俺を拘束して、空いた手は俺の顔から首筋を抜け、着ていたシャツのボタンを器用に外し始める。

「やめっ!……っ」

 全開になった部分に益子さんの指が這う。
 敏感に開発された胸の中心に触れられると、条件反射のように身体がビクリと跳ねた。

「ふっ……」

 三輪以外の奴に触れられて反応を見せてしまった自分が悔しくて、唇をギュっと噛みしめる。
 強く噛みしめたそこから流れ出た新たな血の味を感じながら、情けなさに涙が出そうだった。

「晴貴の血はそれだけで煽られる。味あわせてくれるか──…」

 そう言って近づいてくる気配にハッとして、腰骨のあたりに乗っていた身体を目指して膝を打ち付けるが、体勢を低くされていた所為で当たっても大して効かない。
 その証拠に益子さんが動く事を少しも止められなかった。

 もはや俺に残された抵抗は、顔を背ける事だけ。

 そんなものは抵抗でもなんでもなく、簡単に顎を捕まれ益子さんの方に向けられた顔に吐き出された息、瞳に映った俺の怯えた顔。
 何もかもが嫌悪の対象で全身を巡る不快さに目を強く瞑った。

「おや?もう暴れないのか?もう私の愛を受け入れてくれる気になったのかな?」
「そんな……んっ!んんっ!」

 そんな筈ないだろう!と続けるつもりが唇を貪られ、言葉にならなかった。

 侵入してきた益子さんの舌によって、口内を犯され気持ち悪さに涙が滲む。
 喉の奥に自分の物ではない唾液を感じて嘔吐感が込み上げた。 

 咄嗟に舌を噛んでやろうと力を込めるとカンの良い益子さんは素早く逃れ出て行く。

「危ないな、晴貴の血は甘くて美味しいけど、晴貴も私の血を味わいたいのか?」
「はぁ、っ……んな訳、ねぇ、ダロ」

 荒くなった息を整えながらその顔を見上げると、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべた益子さんが、それでも尚冷めた目をしているのに気が付いた。
 その様を見ながら、今目前にいるのが益子さんなどではなく、まったく別人なのではと思えて仕方がない。

 この人は誰だ?
 本当に益子さんなのか?

 これが、
 優しくデッサンのとりかたを教えてくれた人か?
 合宿の時将来の夢を朝まで語りあった人か?
 相談すれば嫌な顔もせずに自分の事のように考えてくれ、後輩にも先生からも信頼されていた、あの益子さんか?

 これが、益子さんだと言うのなら、あの穏やかで優しく、時に厳しいそんな裏側にこんな醜いものを隠していたと言うのか?

「益子、さ、んっ。……どうしたっていうんだ。こんなのあんたじゃねーよっ。こんな事、こんなっ……」

 俺の言葉に益子さんの動きが一瞬止まった。

「……晴貴、これが私だよ。ただ、お前に焦がれているだけの男だ。……だが、こうなってしまったのはお前の所為かもしれないな」
「俺、の…?」
「ああ、お前が私ではなく三輪を……いや、私以外を選ぶから……私の心を奪うから……誘うから……お前の所為だ、晴貴……っ。晴貴!」

 狂ったように俺の名を呼び激しく口を吸われた。

 相変わらず嫌悪感に犯されながら、必死で顔を逸らせ抵抗するも追いかけてくる益子さんから逃れられなかった。

「んっ…は、や、んっ……め…んっ」

 抗議の言葉もことごとく吸収されていく。
 合間に胸元に伸びた手が、指が、三輪によって覚え込まされた箇所を嬲る度にビクッと身体が反応する。

 悔しい。
 怖い。
 情けない。

 そんな負の感情にも身体は追いつかず、快感だけを順当に摘み取っていた。

「んん!……んぁっ!…や、……あっ、めろっ!…」
「へぇ……そうだな、私にも知らない事がある。と言う事を認めるよ。……晴貴は何時の間にこんな淫らな身体になったんだ?胸だけで、ココが濡れてる。それとも晴貴は元々こうなのか?──…淫乱?」

 耳元に口をつけ屈辱的な言葉を告げられて怒りに脳内が湧く。
 何時の間にかベルトを解かれたソコは固く立ち上がりうっすらとシミが出来ていた。

「くっ……見んなよ。……触んなっ。止めろよ」
「それは無理な相談だ。晴貴のこんな所触れずにはいられないだろう?」

 益子さんのニヤニヤとやらしい笑顔に虫唾が走る。
 おぞましさに鳥肌が立ち暴れても、抵抗は全て封じられてしまう。

 これからされる事を考えると恐怖が湧き上がるが、今はそれより相手との体格差が在るとはいえ、男にこうも易々と組み敷かれている状態に情けなさや悔しさが先だった。

「くそ、……なん、でだよ。なんで俺……くそっ!」
「……晴貴?」

 くそ、くそ、と呟き始めた俺を不思議そうに見ていた益子さんだったが、ベロッと目元を舐めて、

「泣くな、晴貴。気持ち良くしてやるから……」

 と、的はずれな慰めを口にした。



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