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三輪×片山シリーズ
STORY > 休日争奪戦 >

昼休みの屋上って、人が居ないものなんだ。
って、三輪と昼飯を食べにここに来て初めて知った。

そもそも、屋上に入れるのさえ、知らなかった。俺。
興味なかったしな。

でも、晴れた日の屋上って気持ちいいのな。
郊外の高台に立つ学校だから、屋上からは何の邪魔もなく、町が見える。
そよぐ風、ぽかぽか暖かい日差し。
かすかに聞こえる、昼休みのざわめき。

あぁ、いい気分なんだけどな〜。

「片山さん」

怒った三輪が居なければ……。

現実逃避をしていた、俺の思考に割り込んできた三輪の声は、まだ少し、怒気を含んでいた。
先に屋上へ入った俺は、振り返って、三輪を見る。
冷笑を顔に貼り付けた三輪が目に入り、俺気持ちは益々落ち込んだ。

あ〜。もう、なんで、あんな事くらいで、こいつはこんなになるんだ?
ちょっとじゃれてただけだ、つーのっ。

「片山さん」

もう一度そう言って、俺の頬に手を伸ばしてくる。
三輪の手に触れられた瞬間、身震いした。
触った手が冷たかったからだけじゃないのを、俺は自覚している。

「三輪……?」

「片山さん、俺の事、今怖いですか?」

「……怖くねぇ」

怖いかって聞かれたら、怖くないって言うしかねぇじゃん?
素直じゃないのも、怖がってるのも分かってんだろう?
だから、聞くな。

俺は、すでに掴まれたようになっている頬の手をそのままに、三輪を睨みつけた。
目線がぶつかり、負けてなるものか、と睨み続けていると、三輪の雰囲気が変化するのが分かる。
さっきまでの、キレかけている雰囲気が和らいだような感じがした。

「素直じゃないなぁ、ま、片山さんらしいですけどね」

「……」

「俺、片山さんに質問あるんですけど」

「なんだ。……ってか、話しすんなら、手をどけろ。痛い」

「……いいでしょう」

三輪は、少し考えた後掴んでいた頬を離すと、そのまま俺の手を掴み、入り口の横の壁へと引っ張りこんだ。
そこは、誰か他に人が来たとしても視覚になる場所でもある。

「なんだよ」

「俺が何で怒ってるかわかります?」

俺から少し離れた場所に立ち、こちらを見ている三輪の顔はいつになく、真剣だった。
キレてる訳じゃないが、それは、それで、なんか怖い。
しかも、手にしているのが二人分の弁当で、それが三輪の手作りってのもある意味怖い。
男が男に手作り弁当って気持ち悪くねぇ?

「聞いてます?」

「あ、あぁ、や、あれだろ?橘とか佐藤とかとじゃれてたから」

「分かってるんですね」

ため息をついて、三輪は、弁当二つを持ったまま、一歩、二歩と、俺に近づいてくる。

反射的に、俺は後ずさりした。
いや、現実には、後ずさりできなかったけど。
後ろが壁でこれ以上下がれなかったから。

「じゃ、なぜ片山さんが、あの人達とじゃれると俺が怒るか分かりますか?」

「……分かると思う。でもなお前のはいきすぎだろ?」

三輪が嫉妬してるってのは分かる。
でも、ただの友達に触られても別に意味なんてねぇじゃんか。

ふくれっつらで言う俺に、三輪は今日二度目のため息をついて、見つめてきた。
見つめてっていうより、睨んで?あれ、また怒ってんのか?

「じゃぁ、質問変えましょう。片山さん、俺が片山さん以外のやつとじゃれてんの見ても平気ですか?」

そう言われて、考えてみる。が、到底三輪のような感情は自分には理解出来なかった。

それが、迫られてるってんなら解かる。
さすがにそれは嫌だ、と思う。

でも、友達だろ?
友達同士がじゃれててなんで嫉妬なんかするんだ?
どうにかなる訳でもねぇーじゃん。
意味わかんねぇ。

なので正直にそう答えてみる。

「平気かも」

その言葉を告げた時、三輪はすごく悲しそうな顔をした。
俺の頭では理解できないけど、なにか、三輪を傷つけたみたいだった。

「三輪?」

不安になり、俺は近くにいる三輪に手を伸ばした。
同時に三輪は俺からすっと離れ、俺の手はむなしく空を掴む。

三輪に避けられ、俺の心臓はずきんと痛んだ。

「三輪……」

「もういいです、なんだか、一人舞い上がってたようで、つらい」

「なんだ、よ、それ」

「俺、少し考えます。片山さんも、考えてみてください」

「考えるって何をだよ」

「お互いの気持ち……かな」

三輪は辛そうな顔をして、俺を見つめると俺の目の前に弁当を突き出した。

「これ、せっかく作ったんで、でも片山さんがいらないなら、捨ててください」

「三輪……?」

三輪の意図がつかめない。
でも何か言わなければとあせって口を開こうとしたが、何を言っていいか解からず、結局名前を呼ぶだけ。

三輪はそんな俺に少しだけ笑顔を見せ、手に弁当を握らせると、屋上から出て行った。

俺はもう、何でこうなったか、三輪がどう思っているか、自分はどうしたいか、すべてがごちゃごちゃに渦巻いてて、そこからしばらく動けず、三輪をそのまま行かせてしまった。

予鈴が鳴っても動けず俺は、もんもんと、三輪の事を考えていた。

手には三輪の作った弁当。
それを開けると俺の好きなから揚げと、あんまり好きじゃない野菜類が入っていた。

いつも俺の身体を気にして、三輪の部屋へ行くと必ず野菜が出てきた。
この所作ってくれてる弁当も同様で、口では、不満を言ったけど、内心すごく嬉しかった。
三輪の愛情を感じられて。

さっきの話しの流れから、俺は三輪を傷つけたと思う。
で、三輪は自分の気持ちを考えると言った。

って事は、俺との関係を考えるって事だろうか?

なんだよ、この前、ずっと一緒にいるとか言ったのは、嘘かよ。

そう思ったら、泣けてきた。
くそ。三輪のあほ。
泣かせるなっ。

泣きながら食べた三輪の弁当は、それでも旨くて、また泣けた。
こんな泣き虫だっけか?俺。

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