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ROシリーズ
-もしも、樹哉が猫をかぶらずに、転入の挨拶をしていたら-


 今日から、新しい学校に編入出来る。
 今まで色々と迷惑と、心配を掛けただけに、今回こそは、平穏無事に学園生活を送りたい。

 それが、俺の希望だ。

 それについて、どうすれば、平穏で済むか、色々と考えてみたものの、妙案など浮かばず、今日という日を迎えてしまった。

 う、どうしよう。

 とか考えている間に、教室が目に入る。
 見えてきた教室に、もう、どうにでもなれ、と覚悟を決めた。

「入るぞ?」

 先を歩いていた、担任と紹介された、熊男、大野が俺を向き直る。

「はい…」
「緊張してんのか?…そうだなぁ、……ま、がんばれ。としかいえないなぁ」

 おい、大野。
 それは、元気づけているのか?

 俺は、大野を軽く睨み上げた。

「ん、ま、そんな顔できんだし、大丈夫だな」

 勝手に解釈した大野は、俺の返事も待たず、教室の扉を開けてしまった。

 おい、こら。
 心の準備をもっとさせろっ。

 と思いつつも、もう後にはひけない。
 俺は、顔を引き締めつつも、大野の後に続いた。

 教室に、入ると、なぜか、ほとんどの生徒がダレていた。
 そして、数名のまじめそうな生徒がこちらをチラリと見るなり、固まった。

 ……暑いからか?覇気がないな、このクラス。

「クラス委員?」

 大野が不思議そうな声で、聞く。
 クラス委員と呼ばれた男は、さっきから此方を見ているのに、微動だにしない。

 なんだよ、このクラス。

 ……というか、なんで、皆、俺見て、ひそひそ言ってるんだ?
 俺なんかした?

 ふと、視線を感じて隣をみたら、大野が、納得。という感じで、頷いていた。

 あ、もしかして、俺の容姿?
 自慢じゃないが、確かに、俺の容姿は際だって良い。その自覚はある。

 クラス委員が固まってるのは、俺に見惚れているから、だとして。
 なぜ、ひそひそ?
 
 んだよ、感じ悪いな……

「あー、転入生だ、ほれ自己紹介!」

 そう言って、大野が背中をバシンと叩いた。

 ……地味に痛いから……。

 痛みに、眉を潜めたら、前の方の席のやつが、数人真っ赤になった。
 ……何、想像してんですか?

 って、ここ、そういう性癖のやつ多いの?

 ええ?
 俺、もしや、楽園?

 いや、でもな、俺にも選ぶ権利つーもんあるでしょ?

 ま、ともかく、挨拶。っと。

「相沢、樹哉です。よろしく。わかんない事ばっかなので、色々と教えて下さい」

 そして、なるべく、当たり障りのない笑顔を見せる。

「かっわいいーー」
「色々ってなに~?」
「俺が色々教えてやろーか?」
「樹哉ちゃーん、こいつの色々は、危ないから気をつけた方がいいよ」
「お前もだろーが」

 途端にざわつく、教室内。

 これで、このクラスの奴らほとんど男相手にできる奴だとわかった。
 しかし、所詮、男子校。
 からかい方が下品だな……。

「いい加減にしろ」

 と、止めに入ったのは、俺の横でにやにやしている担任ではなく、クラス委員と呼ばれた男だった。
 そいつは、冷気を含んだ口調で、そう言うと、クラス中を見渡して睨みをきかしている。

 そいつのお陰で静かにはなったものの、静まりかえる空気が痛い。

 あーあ。そんな、怒んなくてもいいのにな。

 そんな事を思いながら、苦笑いをしている俺に、大野は、

「ま、中上が静かにしてくれたし、HRに入るか。相沢、お前の席は、石津の隣だから、おい、石津」
「はーい!ここだよ、相沢くん」

 声の方を向くと、石津という俺好みの可愛らしい男がにこにこ手を振っていた。
 しかも、席は、窓際の一番後ろ。

 や、俺、運気上がってる?
 良い席だし、石津かなり、可愛いんですけど。

「じゃ、席つけ」

 大野の言葉に従って、石津の方へと歩く。

 石津に気をとられて、ウキウキと歩みを進めていると、自分の尻に誰かの手が当たる。

 偶然か?と、思ったが、ちらりと後ろを振り返ると、ニヤついた、表情の男が「良い尻してんじゃん」とか呟いてた。

 ……このクラス痴漢もいるんだ……
 ま、いっか経るモンじゃなし。と思って素通りすると、次から次へと手が伸びてくる。
 それを避けたり、避けきれずなでられたり、で、一番後ろの石津の所に行くまでにやけに時間がかかってしまう。
 
 なんだ、これ。
 いやがらせ?

 しかも、地味で、目立たないから、質が悪い。

 で、やっと、一番後ろだ。と油断した途端、大事な自分の息子をもするっと撫でられた。

 さすがに、キレます。俺でも。

 俺は、場所をわきまえず、息子を撫でた男の胸ぐらを掴むと、ぐっと持ち上げる。
 男は、驚いた表情を貼り付けたまま、「ぐっ……」とか言った。

 男の方がでかかったが、座っていたのを持ち上げられ……ようは、宙づり。
 俺、腕力あんまない方だと思うけど、これくらいは余裕だよ?

「あんま、舐めないでくんない?次、俺怒らせたら、こんなもんじゃすまないよ?」

 にっこり、笑顔と共に、がつっと頭突きをお見舞いした後、手を離す。男は、「うぅぅ…」とか言いながら元いた自分の机につっぷした。

 あー、なんか大げさだろう?
 俺、手加減したし。

「……相沢…何やってんだ」

 大野が呆れながら、俺に注意をするから、俺は不満げな表情を隠さずに、大野に向き直る。

「いや、別に、俺自分守ってるだけだし?こいつが……というか、この周辺のやつらが、勝手に俺触るから悪いんじゃん」

 俺の言葉に、視線が集中する。

 真っ赤な顔のやつ、好奇心丸出しのやつ、青くなるやつ。
 色々の中、クラス委員と呼ばれた中上は、不機嫌な面で、俺を見ていた。

 む、なに、睨んでるんだ、あの男は。

 むかついたので、ついにらみ返すと、中上は、一瞬だけ驚いた顔をしたが、直ぐにそっぽを向いてしまった。

 なによ。気になるだろ。
 あ、というか、俺、平穏無事な学園生活送るの無理かも……。

「……相沢、お前ね……、ま、いいや、お前、早く席につけ。あーはいはい。静かに!……よし。あ、で、今日のSHだが…」

 大野が話を始めると、やっと、視線が外れた。

 ホッと息を吐きながら、そのまま自分の席につく。
 すると、横の可愛い石津が俺にしゃべりかけてきた。

「あの…相沢君、大丈夫?」

 心配そうに、俺を見る石津。

「あ、だい…」
「しっ。もっと小さい声で、ね」

 と、自分の人差し指を口に持っていき、しーという動作の石津。

 ぎゃ。可愛い。
 抱っこしたい。なでなで。したい。ああーー。
 
「うん、ごめんね。ってか、石津くんって可愛いなぁ」
「……っ……相沢くん……」

 俺は、いつもの癖で、気に入った相手を落とす時の極上の笑顔を石津に向けていた。
 途端に、真っ赤になる石津。

 やっぱ、可愛い。

「俺、石津くんの事気に入っちゃった。ね、もっと、石津くんの事教えて?」

 そう言って手を伸ばして、石津の手を握りしめれば、石津は、赤い顔を更に赤くして、うつむいてしまった。

「顔、見せて?」
「……あ、相沢く……」

 もうちょっと、で、石津が落ちそう。と思ったときに、殺気を感じ、何かが飛んでくるのが、目の端に映った。
 俺は、石津の手は離さず、頭をちょっと、左に動かしそれを避ける。

 その何かは、俺の頬の直ぐ横を飛び去り、後ろにあった、ロッカーに当たり落ちた。

 落ちた残骸を確認すると────チョーク?
 何だ?

「そこ!いちゃいちゃすんな」

 大野が怒り顔で、そんな事を言うので、つい、

「いちゃいちゃ、なんてしてませんって。まだ、口説き中ですから!」

 と、大いばりで言ってしまった。

 しまった!
 と思った時には既に遅く、未だ俺に手を持たれたままの顔の赤い石津は、俺の横で固まり、大野は、あきれ顔で、睨まれ、ついでに、中上にも睨まれた。
 他の生徒達も、ザワザワと騒ぎ出し、其れを諫める気力をなくした大野は、俺に「後で職員室に来い」と言い残し出て行った。

 教師の居ない教室内で、俺を遠巻きに、興味津々で、見る生徒を感じながら、俺は、またもや、この学園で、平穏には過ごせないのだと、感じていた。

 今回は、もう、自業自得。
 こうなったら、好きにやるしかない。

 そう決めた俺は……

「石津くーん、さっきの続き、ね、もっと、君の事教えて~~」

 石津を落とすべく、手に力をこめるのだった。

End









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